授業で音楽を使う (1)

私は、本屋として以前からドイツ語圏の教師会にはお邪魔させていただいていたのですが、自分がギムナジウムの専任になってからは、ドイツ国内の3つの教師会には会員としてヨーロッパ教師会や日本語教育会議にもお邪魔するようにしています。年一回の総会、研修会、分科会など様々な集まり全てに参加することは不可能ですが、できる限り出向いていますし、時々教師として現場の立場からの報告のような発表をさせていただく機会もあります。あるいは、編集者として、教科書を作る話、著作権の話などもしたことがあります。
その中で、比較的最近興味を持っているのが、授業の中で音楽を使うことです。 これは自分が音楽が好きだからに他ならないので、他の先生方にオススメすることはできません。 音楽が苦手な方もいらっしゃるし、聞くのは好きでも、自分が歌うのは、、、という方もいると思います。
ドイツでは、学校教育の中での「音楽」がどうも日本の事情とはだいぶ違うようです。身近な方の体験例数例を見聞きしているだけなので、それがドイツ全体、あるいは、今、現在の事情と即しているかは別として。少なくとも日本のように課外活動に「合唱」「オーケストラ」「ビックバンド」「吹奏楽」などがある学校もありますが、多分「軽音楽」部などはかなり少ないと思います。まして、学校行事として学芸会や合唱コンクールなどもあまり聞きませんし、クラス対抗で全員参加の合唱なども聞いたことがありません。ドイツというと音楽大国、町中に音楽が溢れている、というイメージがあります。もちろん教会の無料コンサートや小さな演奏会から、世界的に有名なオーケストラの演奏まで比較的手軽な値段で楽しめるという意味では音楽が日常に溢れているという実感はあります。ただ、いわゆる日本のような「お稽古事」文化、がそもそもヨーロッパ(少なくともドイツ)にはないので、親が音楽家であるか、よっぽど音楽好きでないと楽器を始めることができない。学校教育では、楽譜の読み方とかもあまり教えてないようですし、一昔前だと音程の合わない子には「お前は黙ってろ」などという先生までいたそうです(日本にもいるのかもしれませんが、私の知る限りでは日本ではみんなで一緒に、下手でも頑張ろうという雰囲気でクラス対抗の合唱コンクールに取り組んだりしている)
音楽する子としない子が歴然としていて、「する子」にしてもいわゆる音楽高校に実技の入試試験はなく、日本だと「音楽するからにはピアノはバッハのインベンション程度は弾けないと」と言われていますが、ドイツでは音楽高校でも楽器を一つできればよくて、ピアノは全然弾けない子もたくさんいるそうです。あと日本だとお稽古事は3、4歳から始めることも稀ではなく、6歳より前が普通と言いますが、ドイツではそもそもバイオリンも4分の1が一番小さいもので、8分の1はスズキのバイオリンしかない。(今は他の会社も作るようになったかもしれませんね)
学習者の中には当然「自分は歌はだめ」と思い込んでいる人もいるし、楽譜読めないのは当たり前だし。 だから、先生が音楽が好きでも、それを一般の日本語授業で使うことにためらいを感じてる方が多いかと思います。 私の場合は、教室で当然いろんな人がいるわけで、音楽好きだったり、そうでもなかったり、苦手意識を持っていたり、人前で演奏するのは嫌だったり、、、そういう諸々を承知の上で、学習活動として音楽を取り入れています。
前置きが長くなりましたが、次回から数回に分けて私の実践報告と具体例を書いてみたいと思います。 (ヨーロッパ日本語教育連絡会議での発表を元にしています。その発表の報告を文書にして提出していませんので、デジタルにはどこにも残っていません)

Erstellt: 31. Oktober 2020 10:54

Zuletzt überarbeitet: 1. November 2020 22:52