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このプロジェクトのこと(2)
今日は、久しぶりに著者の大島ゲーリッシュ先生と電話でお話しすることができました。
前回、このプロジェクトの始まりである「福岡からこんにちは!」を作るに至ったいきさつみたいなことを書きましたが、書きながら結構色々忘れていることもあり。 電話で先生とお話しするうちに、だんだん当時の自分の思いや先生の思いを省みることができました。
とにかく、初級文法を終わった後の手頃な教科書がなかったこと。 もちろん、当時から「外国語としての日本語」の教科書はたくさんあり、多くは日本で出版されたものでした。日本語だけで書かれている本冊に、各国誤訳や文法解説を副読本として備えているもの。 本冊の中に英語/ 中国語/ 韓国語 などを添えているもの。全部ローマ字と英語で書かれたものもありました。しかし、ドイツに生活するドイツ語を母語あるいは生活用語として使っている学習者が週に1回か2回の授業で勉強する教材となるとなかなかありませんでした。
多くの教科書は、初級文法(て形、ない形など)が出揃ったところで、2巻に行きますが、そこで急に文法以外のところ、語彙などが難しくなります。JLPTのN5 (以前は4級)によく出る単語「シャワーを浴びる」「歯を磨く」「電話をかける」などがどんどん出てくる。今まで「電話をします」でいいですよ。と言っていたのに、2巻になったら新しい単語が増えて、それだけでついていけなくなる学習者もたくさんいました。そこで、語彙や漢字は比較的簡単なままで、新しい文型をどんどん学び自分で文章を作ったり読んだりできるようにしていくことを目指した「福岡からこんにちは!」は自分が使ってみて一番ピッタリくるものでした。
また、「ミュンヘン大学で学んだトーマス・ミュラーさんが、交換留学で九州大学にいく」というストーリーがあるという点でも、単に例文を並べただけの教科書とは違う魅力がありました。 具体的に「福岡」「九州大学」が出てきて、そこで、ホームステイをしたり、旅行したり、あるいは、銀行での研修も体験する。そのストーリーとキャラクターを活かして、教室では、文型練習以外の活動をすることもできます。
最初に大学で古いバージョンの「福岡から今日は!」を使った時に、一番残念だったのは、やはりワープロと写真を貼り付けコピーを閉じただけのフォーマットやレイアウトでした。多分大学の中で何度もコピーしているうちに写真のクオリティーが下がってしまったのか、あまり綺麗ではない写真もあり、せっかくのストーリーに対してイメージがわかないということもありました。多分、自分が使いながらもう少し綺麗なものができるのではないかと思ったのでしょう。どういう手順だったのかはいまだに思い出せないのですが、著者の大島ゲーリッシュ先生に連絡をつけて、大学の研究室にお邪魔したのはよく覚えています。ミュンヘンから電車に乗れば30分ぐらいではありますが、やはり別の街の初めての大学で、広いキャンパスの中で迷いそうになったこともあります。何度か先生をお訪ねして、具体的に出版の計画を話して書籍化へとたどり着いたのだと思います。もう一人の著者である小黒先生は、九州大学の教授で、私が出版計画を立ててた時点では、すでにミュンヘン大学での研究を終え、日本に戻られていました。新しいバージョンを作ることに関しては、大島先生から連絡を取っていただき、快く承諾してくださいました。
そして、またまだまだ駆け出しの出版社とも呼べない時期のJapanPub.でしたが、その頃国際交流基金で「教科書を作ろう」という先生方を支援する教材も出ており、出版物への助成金の制度もあったので、そこから援助をいただけることになったことも、大変大きなチャンスでした。その助成金制度はその後なくなってしまいましたが、なくなる直前に私たちのプロジェクトが受け入れていただけたこと。これによって出版物という形ができたことは本当に幸運だったと改めて思い起こしている次第です。
Erstellt: 30. Oktober 2020 12:16